思考力とは?|モンテッソーリ教育が育てる「考え続ける力」
最近、「子どもの思考力を育てましょう」と聞くことが増えました。
では、「思考力」とはどのような力なのでしょうか。
私は、思考力を、自分で問いを持ち、考え、試しながら、自分なりの答えを探していく力だと考えています。
モンテッソーリ教育には、子どもが自分で活動を選び、手を動かし、感じ、気づき、考えていくための環境があります。
私自身、モンテッソーリ教育を受けて育ち、現在は娘もモンテッソーリ教育の園に通っています。
この記事では、モンテッソーリ教育と思考力にはどのような関係があるのか、子どもの日常の姿も交えながら考えてみたいと思います。
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思考力というと、難しい問題を解いたり、論理的に物事を考えたりする力をイメージするかもしれません。
でも、幼児期の「考える」という活動は、もっと身近なところから始まっています。
たとえば、
- 「どうしてだろう?」と疑問を持つ
- 物事を比べる
- 共通点や違いを見つける
- 順序を考える
- いくつかの方法を試してみる
- うまくいかなかったときに、別の方法を考える
- 自分なりの答えを見つける
こうした一つ一つの経験も、「考える」ことにつながっています。
文部科学省では、幼児期に育みたい資質・能力の一つとして「思考力、判断力、表現力等の基礎」を挙げ、「気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりする」ことを示しています。
つまり、幼児期の思考力は、知識をたくさん覚えることだけではありません。
気付いたことをもとに、自分で考え、試し、工夫する。
そうした経験も、考える力につながっていくのだと思います。

「答えを知っている」と「自分で考える」は違う
たとえば算数でも、解き方を教えてもらい、その方法を使って答えを出すことは大切です。
一方で、
- 「どうしたら解けるだろう?」と自分で考えてみる。
- やってみて、うまくいかなければ別の方法を試す。
- 「こっちの方が簡単かもしれない」と工夫する。
このような経験は、思考力を育てる土台となります。
知識や正しい方法を身につけることと、自分で方法を考えようとすること。
どちらも、子どもの学びには大切なのだと思います。
モンテッソーリ教育は「考える環境」をつくる
モンテッソーリ教育では、子どもが自分で活動を選び、自分の力で取り組むことを大切にしています。
日本モンテッソーリ協会でも、子どもが自分で活動を選択し、整えられた環境の中で活動することや、「子どもは自分で自分を教育する力を持っている」という自己教育力について紹介しています。
では、こうした環境は、思考力とどのようにつながっているのでしょうか。
子どもは自分から考えようとしている
モンテッソーリ教育では、子どもには自分で自分を育てていく力があると考えます。
これを「自己教育力」と呼びます。
もちろん、子どもが最初から何でも一人でできるという意味ではありません。
- 「やってみたい」
- 「もう一回やってみよう」
- 「どうしたらできるかな?」
そんな子どもの内側から生まれる動きが、学びの原動力になっていきます。
- うまくいかなかったときに、もう一度やってみる。
- 少しやり方を変えてみる。
- 自分で確かめてみる。
大人から見ると小さな行動でも、子ども自身はその中で考え、試し、気づいていることがあります。
だからこそモンテッソーリ教育では、「何を教えるか」だけではなく、子どもが自分で選び、考え、試してみることができる環境を大切にしています。

自分で考えるための教具
モンテッソーリの教具には、子どもが自分で違いを感じたり、比べたり、試したりできるように工夫されたものがあります。
たとえば、ピンクタワーなら「大きい・小さい」、茶色の階段なら「太い・細い」、色板なら「同じ色・違う色」など、実際に手を動かしながら違いを感じ取っていきます。
大人から「これは大きいね」「これは同じ色だね」と教えてもらうだけではなく、自分で見て、触れて、比べることで気づいていくことができます。
教具は、知識を一方的に教えるためだけのものではありません。
子ども自身が考え、確かめ、気づいていくための環境の一つなのです。
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大人も「考える環境」の一部
そして、モンテッソーリ教育における「環境」は、教具だけではありません。
子どもが自分で考え、気づいていけるように、大人がどのように関わるかも大切です。
たとえば、子どもがうまくできないときに、すぐに答えや正しい方法を教えるのではなく、
- 「どうしたらできそうかな?」
- 「もう一度やってみる?」
- 「どこが違うのかな?」
と、子ども自身が考える余地を残すことがあります。
先生や大人が必要なときには手を添えながらも、子ども自身が感じて、考えて、気づくことを大切にする。
そうした関わりもまた、子どもの自己教育力を支える環境の一つなのだと思います。
思考するための「体験」
子どもが何かを考えるとき、その前には、実際に見たり、触れたり、やってみたりした経験があることも多いのではないでしょうか。
ここでいう「体験」は、特別な教育活動だけではありません。
日常の中で、子どもが実際にものに触れたり、変化を見たり、違いを比べたりすることも含まれます。
体験から「気づき」が生まれる
たとえば、
- 冷たい
- 重い
- ざらざらしている
- こっちのほうが大きい
- 昨日とは少し違う
子どもは、実際に見たり、触ったり、比べたりする中で、さまざまなことを感じます。
そして、その経験から、
- 「こっちのほうが重い」
- 「昨日と色が違う」
- 「こっちはつるつるしている」
といった気づきが生まれることがあります。
「気づき」が「考える」につながる
気づいたことは、ときに次の疑問につながります。
- 「どうしてこっちのほうが重いんだろう?」
- 「どうして昨日と色が違うんだろう?」
- 「どうして葉っぱが落ちたんだろう?」
こうした「なんで?」は、考えることの入り口の一つです。
そして、疑問が生まれたら、
- もう一度見てみる。
- 実際にやってみる。
- 図鑑で調べてみる。
- 誰かに聞いてみる。
そうして確かめていくうちに、また新しい気づきや疑問が生まれることもあります。
流れにすると、
体験する(見る・触れる・比べる)
↓
気づく
↓
「なんで?」と疑問を持つ
↓
考える・試す・調べる
↓
また気づく・考える
という循環です。
大切なのは、体験したことがそのまま思考になる、と単純に考えることではありません。
体験したことから何かに気づき、その気づきが考えるきっかけになることがある。
そして、そのプロセスを支えているのが、子ども自身の「やってみたい」「知りたい」という自己教育力と、それを支える環境や大人の関わりなのだと思います。
思考力を育てるために、親ができること
子どもが自分で考える経験を重ねていくために、家庭でできることもあります。
すぐに答えを教えず、一緒に考えてみる
子どもから「なんで?」と聞かれたとき、私たちはつい答えを教えたくなります。
もちろん、知っていることを教えるのは悪いことではありません。
でも、すぐに答えを出すのではなく、
- 「どうしてだと思う?」
- 「どうしたら分かるかな?」
- 「一緒に見てみようか」
と返してみるのも一つの方法です。
子どもが考えている時間を、少し待ってみる。必要であれば一緒に調べる。
答えを知ることだけでなく、答えを探す過程も大切にしてみましょう。
実際の体験を大切にする
子どもの「なんで?」を育てようと思うと、動物園や水族館に行ったり、何か特別な活動を用意したりしなければならないように感じるかもしれません。
でも、ここでいう「体験」は、特別なお出かけや、知育のために準備した活動だけではありません。
- 朝、窓から外を見る。
- 散歩の途中で葉っぱを比べる。
- 水をこぼしたら、どうしたら拭けるか考える。
- 料理をしながら、材料の変化を見る。
- 家にある図鑑を開いて、実物と比べてみる。
こうした何気ない日常にも、子どもが「見てみたい」「やってみたい」「どうしてだろう?」と思うきっかけがあります。
大切なのは、親が次々と体験を用意することではなく、子どもが興味を持ったことを、一緒に見たり、試したり、確かめたりすることなのかもしれません。
AI時代にも大切にしたい「考える経験」
AIの進化によって、知りたいことを調べたり、情報を整理したりすることは、これまで以上に簡単になっていくでしょう。
文部科学省も、学校における生成AIについて、人間中心の利活用や情報活用能力の育成を基本的な考え方として示しています。
だからこそ、これからの子どもたちには、単に「たくさん知っていること」だけではなく、
- 何を知りたいのか
- どの情報を使うのか
- その情報をどう考えるのか
- 自分はどう判断するのか
といったことも大切になっていくのではないでしょうか。
AIを使うかどうかにかかわらず、
- 「これはどうしてだろう?」
- 「本当にそうなのかな?」
- 「別の方法はないかな?」
と、自分で問いを持ち、考え、確かめる経験は、これからも大切な学びの一つだと思います。

考え続ける力は、これからの人生の土台に
私自身、モンテッソーリ教育を受けて育ちました。
もちろん、今の自分の考え方や行動のすべてを、モンテッソーリ教育のおかげだと結びつけることはできません。
それでも、
- 分からないことがあれば調べてみる。
- 疑問に思ったことをそのままにせず、自分なりに考えてみる。
- 一つの答えだけでなく、別の見方を探してみる。
そんな姿勢は、子どもの頃から積み重ねてきた経験とも、どこかつながっているのかもしれないと感じています。
モンテッソーリ教育の大きな価値の一つは、答えを教えることだけではなく、子どもが自分で考え、試し、確かめる経験を重ねられる環境をつくることにあるのではないでしょうか。
「なんでだろう?」
「やってみよう」
「うまくいかなかった。じゃあ、どうしよう?」
そんな小さな思考の積み重ねが、やがて自分の人生について考えたり、選んだりするときの力にもつながっていく。
私は、そんな「考え続ける力」を、子どもの頃から大切に育んでいきたいと思っています。
この記事でお伝えしたいこと
- 思考力は、知識をたくさん覚えることだけではなく、考えたり、試したり、工夫したりする経験とも関係している
- モンテッソーリ教育では、子どもの自己教育力を尊重し、自分で選び、考え、試せる環境を大切にしている
- 教具だけでなく、子どもが自分で気づけるような大人の関わりも「考える環境」の一部
- 日々の体験から気づきが生まれ、その気づきが「なんで?」という疑問や考えるきっかけにつながることがある
- 親が特別な体験をたくさん用意しなくても、日常の中に考えるきっかけはある
- 「自分で考える・試す・確かめる」という経験は、これから先の学びや生活を考える土台の一つになり得る
📚参考文献・参考資料
この記事では、以下の資料を参考にしています。
- 文部科学省「学校現場における生成AIの利用について」
- 文部科学省「幼稚園教育要領(平成29年3月告示)」
- 文部科学省「幼児期の教育において育みたい資質・能力の育ちを捉える研究」
- 日本モンテッソーリ協会(学会)「モンテッソーリ教育のご紹介」
- Association Montessori Internationale「Montessori Environments」
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