「モンテッソーリ教育では、まず『提示』をします。」

教具について調べると、この言葉をよく目にします。

でも、

  • 「提示って何?」
  • 「教えることとは違うの?」

そう思った方も多いのではないでしょうか。

モンテッソーリ教育では、大人は「教える人」ではなく、子どもの学びを支える存在です。

だからこそ、一方的に教え込むのではなく、まずは静かに見本を見せる「提示」を大切にしています。

今回は、モンテッソーリ教育における「提示」とは何か、おうちで実践するときに意識したいことをご紹介します。


🔗 【モンテッソーリ教育とは?

提示とは?

提示とは、子どもが「自分でできるようになる」ために、大人が見本を見せることです。

モンテッソーリ教育で静かに提示をするお母さん

ポイントは、「教えること」ではありません。「説明すること」でもありません。

まずは、見せること

例えば、水を注ぐ活動なら、

「こうやって持つんだよ。」
「ここに入れるんだよ。」

と説明するのではなく、大人が静かに、ゆっくりと最後までやってみせます。

子どもは、大人の手の動きや道具の扱い方をじっと見ています。

そして、「やってみたい。」という気持ちが芽生えたら、自分で挑戦します。

提示は、子どもの「やってみたい」の種をまく時間なのです。

なぜ説明しないの?

私たち大人は、何かを教えるとき、つい言葉で説明したくなります。

でも、モンテッソーリ教育では、言葉よりも、動きを見せることを大切にしています。

子どもは、大人が思っている以上によく見ています。

  • 手の動き。
  • 道具の持ち方。
  • 水が流れる音。
  • ゆっくり置く様子。

こうした一つひとつを観察しながら学んでいます。

説明よりも動きを見て学ぶ子どもの様子

だからこそ、余計な言葉は、かえって子どもの集中を妨げてしまうことがあります。

提示では、耳ではなく、目と手と感覚で学ぶことを大切にしているのです。

「具体から抽象へ」を支える提示

モンテッソーリ教育では、「具体から抽象へ」という順番をとても大切にしています。

例えばピンクタワーなら、

  • まず積む。
  • 運ぶ。
  • 比べる。
  • 何度も繰り返す。

そのあとで、

「大きい」「小さい」という概念につながっていきます。

具体から抽象への学びを表したイラスト

分数教具でも同じです。

最初に「2分の1」という言葉を覚えるのではありません。

円を組み合わせ、半分になる感覚を何度も味わいます。

その体験が積み重なったあとで、初めて「2分の1」という言葉が意味を持つようになります。

提示は、この「感覚から理解する」という学びの入り口なのです。

「何を教えるか」ではなく「どこまで教えるか」

私がモンテッソーリ幼稚園の授業参観で、とても印象に残っている場面があります。

娘が年少前だった頃、分数教具に取り組んでいました。

最後の一枚だけ、どうしても入りません。

私は思わず、「ピースの向きが違うよ〜!」と言いたくなりました。

でも先生は違いました。

「丸くなっているところを合わせてみよう。」

そう言って、一度だけゆっくり見本を見せました。

娘はもう一度挑戦し、今度は「丸いところ」を意識しながら最後まで完成させることができました。

先生は答えを教えたわけではありません。

子どもが自分で気づける『見るポイント』を示しただけだったのです。

分数教具で先生の提示を受ける女の子

さらに印象的だったのは、

多少ピースの大きさが違っていても、その場では細かく直さなかったことでした。

その日の娘にとって大切だったのは、「全部のピースが入る」という経験だったのかもしれません。

一方で、年中さんの男の子が同じ活動をしているときは違いました。

先生は、「同じ大きさのピースを選んでみよう。」と伝え、

最後に紙へ「1/2」「1/3」…と書きながら、「これを2分の1と言うよ。」と名称を紹介していました。

発達段階によって提示が変わる様子
  • 年少前の娘には「完成すること」。
  • 年中の子には「同じ大きさを見分けること」、そして「名称を知ること」。

子どもの発達によって、

  • 何を提示するのか。
  • どこまで伝えるのか。

それが一人ひとり違うことに、私は「さすがプロだな」と感動しました。

提示は、決まったマニュアルではありません。

その子の今に合わせて変わるものなのです。

提示は自己教育力のスタート地点

提示は、子どもに正しい答えを教える時間ではありません。

提示を見たあと、子どもは、

  • 自分で挑戦します。
  • 失敗します。
  • 考えます。
  • やり直します。
  • 成功します。

この繰り返しが、モンテッソーリ教育で大切にしている自己教育力です。

大人が答えを教えてしまえば、子どもが考える時間は少なくなってしまいます。

だから提示は、自己教育の始まりなのです。

提示から自己教育力が育つ流れ
自己教育力
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提示で大切にしたい5つのポイント

提示で大切にしたい5つのポイント
  1. ゆっくり動く
    • 子どもが見やすい速さで、一つひとつ丁寧に動きます。
  2. 必要以上に話さない
    • 説明よりも、動きを見せることを大切にします。
  3. 動きをはっきり見せる
    • 子どもの見やすい位置から提示します。
  4. 終わったら子どもに渡す
    • 提示は大人がやる時間ではありません。終わったら子どもへ活動を渡します。
  5. 間違いを急いで直さない
    • 子ども自身が気づける時間を大切にします。

おうちでは「完璧な提示」を目指さなくてもいい

本には、「静かに提示しましょう。」と書かれています。

でも、おうちは生活の場です。

私自身、提示をしながら、

「洗濯物を干さなきゃ。」
「ご飯の準備もしないと。」

そんなことを考えてしまう日もあります(笑)。

子どもも、大人も、生活の中で過ごしています。

だから園と同じ環境を、そのまま家庭で再現することは難しいのです。

だからといって、「ちゃんと提示できなかった。」と落ち込む必要はありません。

家事をしながらも子どもに向き合うお母さん

私は、子どもに向き合う数分だけでも、「今はこの時間。」と気持ちを切り替えるようにしています。

すると不思議なくらい、子どもも落ち着いて活動に取り組み始めます。

提示は、子どもだけでなく、大人も集中する時間なのだと感じています。

提示は一回見せれば終わりではない

提示をしても、その日に子どもが活動を始めるとは限りません。

興味を示さない日もあります。

でも数日後、あるいは数週間後に、突然やり始めることもあります。

子どもは、自分のタイミングで学び始めます。

だから提示は、「できるようにさせる時間」ではありません。

「やってみたい」の種をまく時間なのです。

提示を受けて後日活動を始める子ども

まとめ

提示とは、子どもに正しいやり方を教えるための技術ではありません。

子どもが、「自分でやってみたい。」と思えるように、静かに見本を見せる時間です。

そして、提示のあとは、

  • 観察すること。
  • 待つこと。
  • 信じること。

大人が少しだけ関わり方を変えることで、子どもの学びは大きく変わります。

おうちでは完璧な提示は難しいかもしれません。

でも、子どもに向き合う数分だけでも、一緒に集中する時間を作る。

そんな小さな積み重ねが、子どもの「できた!」につながっていくのだと思います。

提示は、子どもに何かを教える時間ではありません。

「やってみたい」という気持ちの種をまき、自分で学び始めるきっかけをつくる時間。

それが、モンテッソーリ教育の「提示」なのです。

親子で穏やかに学ぶモンテッソーリ教育の時間

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