算数の「図形問題」に強くなる!モンテッソーリ教育の幾何学立体
今回は、モンテッソーリ教育の教具の一つである、「幾何学立体(きかがくりったい)」を紹介します。
「幾何学立体」は、幼児期の感覚に働きかけることで、算数の「図形問題」に生きる強力な土台となります。3歳から就学以降まで使える活用方法を全13選解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
こんな方におすすめ
- モンテッソーリの「幾何学立体」を詳しく知りたい
- 教具を買おうか、悩んでいる
- 算数の図形問題の伸ばし方を知りたい
- おうちでできるモンテッソーリ教育に興味がある
幾何学立体とは
「幾何学立体」とは、「三次元の基本的な立体」を見て触って体感するための、モンテッソーリ教育の感覚教具です。青色に塗られた木製の立体(10種類)がセットになっています。
モンテッソーリ教育においては、立体を目で見るだけではなく、子どもが「手で触れられること」を重視します。
10種類の立体と分類
教具の立体は、以下の10種類があります。表面の形(面)と、それに伴う「動き(転がり方)」の特徴によって、大きく3つのグループに分類されます。

①曲面だけでできている(転がる)
↓球(きゅう)/楕円体(だえんたい)/卵形体(らんけいたい)

平らな面が一つもなく、全て丸い面で構成されているグループです。どこに置いても、あらゆる方向にコロコロと自由に転がるのが特徴です。
②曲面と平面でできている(一方向に転がる/立つ)
↓円錐(えんすい)/円柱(えんちゅう)

丸い面と平らな面をどちらも持っているグループです。置き方によって、「一方向にだけ転がる」ことも、「安定して立つ」こともできます。
③平面だけでできている(転がらない/立つ)
↓立方体(りっぽうたい)/三角錐(さんかくすい)/四角錐(しかくすい)
三角柱(さんかくちゅう)/直方体(ちょくほうたい)

平らな面(多角形)だけで構成されており、尖った角(頂点)や辺があるグループです。どこを下にしても転がらず、安定して立つことができます。
「幾何学立体」を扱う上で必要な知識
幾何学立体の活動に取り組む上で、大人が事前に知っておくべき知識を2つ紹介します。
①「平面」と「立体」の違い
平面(二次元)とは、丸や四角、三角のように、厚みがなく机に張り付いた図形を示します。一方で、立体(三次元)とは、球、立方体、三角錐のように「高さ・幅・奥行き」の3つの要素を持ち、空間の中に体積(重さや中身)を持って存在する形を指します。

②立体を形作る「3つの構成要素」
すべての幾何学立体は、以下の3つの要素の組み合わせで成り立っています。
- 面(めん):立体の表面を形作っている平らな部分や曲がった部分。
- 辺(へん):面と面が交わっている「線」の部分。
- 頂点(ちょうてん):辺と辺が交わっている「角」の尖った部分。
子どもに説明するときは、“正確な数学用語”を使うようにしましょう!
知育効果
モンテッソーリ教育の「幾何学立体」は、単に「形を覚える」だけにとどまりません。子どもの脳の発達や、将来の算数・数学の学力にまで及ぶ、非常に高い知育効果があります。主な知育効果は、以下の5点です。
知育効果
- 三次元の空間認識能力が育つ
- 筋感覚の洗練と脳の活性化
- 算数・数学の基礎・土台作り
- 観察力と「知的な目」を養う
- 正確な語彙の獲得
①三次元の空間認識能力が育つ
幼児期は、教科書などの「平面(二次元)」を「立体(三次元)」として理解するのが困難です。教具を使用して、本物の幾何学立体をさまざまな角度から見たり転がしたりすることで、「高さ・幅・奥行き」を直感的に捉える空間認識能力が自然と身につきます。

②筋感覚の洗練と脳の活性化
モンテッソーリ教育では、指先だけでなく「両手で包み込むように触る(筋感覚)」ことを重視します。この活動により、手のひらの触覚が研ぎ澄まされ、筋感覚を洗練させます。そして、「尖っている」「丸い」「平ら」などの触覚刺激が脳の感覚野を刺激し、脳を活性化させていきます。

③算数・数学の基礎・土台作り
頭の中で図形を立体的に組み立てたり回転させたりする空間図形のセンスは、公式の暗記では身につきにくいです。幼少期に幾何学立体に触れた体験と記憶が、小学校以降に習う「展開図」「体積」「表面積」といった抽象的な概念をイメージする力となります。

④観察力と「知的な目」を養う
教具の形を理解することで、子どもは自然と周囲の環境に目を向けるようになります。身の回りの環境をただ眺めるだけでなく、数学的な視点で観察し、共通点を探して分類する「知的な目(環境認識)」が養われます。

⑤正確な語彙の獲得
「まる」「さんかく」「しかく」といった曖昧な表現から、「円」「球」「立方体」といった正確な数学用語を獲得できます。これにより、物事を論理的に説明する言語能力の基礎が培われます。
効果を引き出すポイント
モンテッソーリ教育の「幾何学立体」を扱う上で、前述した知育効果を引き出すための重要なポイントが4点あります。
重要なポイント
- 「筋感覚の洗練」が最大の目的
- 名称は「後から」「正しく」伝える
- 「形の違い」だけに集中できる工夫
- 間違いをすぐに訂正しない
①「筋感覚の洗練」が最大の目的
一般的な算数教育では「イラスト(平面図)」や「文字」から立体を学びますが、モンテッソーリ教育ではアプローチが逆になります。名称を覚えるより前に、「これは尖っている」「これは丸くて転がる」という特徴を手のひらの感覚(筋感覚)で捉えることが重要です。
②名称は「後から」「正しく」伝える
感覚的な体験を充分に経てから、名称を伝えましょう。その際、「サイコロの形」「ボールの形」といった日常の言葉に言い換えたくなりますが、簡単な言葉に崩さずに「正確な数学用語」を伝えるようにしてください。
③「形の違い」だけに集中できる工夫
モンテッソーリ教具の幾何学立体は、全て「青色」に統一されています。これは、視覚的なノイズを無くし、子どもが「形の違いだけ」に100%集中できるようにするためです。家庭で用意する際は、色が統一されているものを選ぶようにしましょう。
また、立体は転がるため、床の上でバラバラに散らばると子どもの集中が切れてしまいます。絨毯やトレイを用意し、境界線を決めて行うことが大切です。
④間違いをすぐに訂正しない
例えばペアリングをする際に、子どもが円錐を「三角の台座」に置こうとしても、大人が間違いを指摘する必要はありません。「底面が丸いのでピッタリはまらない」という結果から、子どもが自分で間違いに気づく(自己修正)ことが重要です。
対象年齢
「幾何学立体」を取り入れる最適な年齢は、3歳半〜4歳頃と言われています。この時期は、子どもの「手で触って確かめたい」という感覚的な欲求がピークに達します。
「ピンクタワー」や「色つき円柱」など、他の感覚教具に十分親しんでから始めるのもおすすめです。
幾何学立体をやってみよう
ここからは、年齢ごとの発達段階と、それに応じた活動方法を紹介していきます。
Step.1(3歳半〜4歳):触る(感覚の体験)
この時期は、言葉で理解するよりも「手で触った感覚(筋感覚)」が優位です。
立体を両手で包むように触ったり、「どっちがコロコロ転がるかな?」と床で転がしたりして、直感的に形の性質を体験しましょう。まずは、特徴が大きく異なる「球・立方体・円柱」の3つの立体から始めてください。

さらに感覚を刺激する活動を、3つ紹介します。
①目隠しタッチ
アイマスクを使って、子どもの視界を遮断します。立体を一つ選んで子どもに渡し、「両手で包み込むように触ってみてね。ツルツルかな?尖っているかな?」と声をかけます。視覚を使わずに「筋感覚」だけで形を感じ取る練習になります。
子どもは「目を閉じる」ことにも集中力が必要です。活動時はアイマスクを使うようにしましょう!
②すべり台実験
絵本などを斜めにして、小さな坂道(すべり台)を作ります。「どれが一番転がるかな?」と声をかけ、立体を一つずつ転がします。「円柱は横にすると転がる、立たせると転がらない(滑る)」など、立体の科学的な性質に気づくきっかけとなります。

③ピッタリ底面合わせ
粘土を用意し、立体の底面をスタンプのように押し付けます。「円柱のお尻はどんな形かな?」など声をかけ、出てきた底面の形を確認します。発展活動である「投影板とのマッチング」の予習となります。

言語教育の教具「メタルインセッツ」のように、幾何学立体を使って運筆をし、底面の形を確認するのもおすすめです!
Step.2(4〜5歳):名称を知る
この時期は、語彙が爆発的に増え、物事の「名前(名称)」に強い興味を持ちます。
まずは、「三段階の名称法」を使い、「球(きゅう)」「円錐(えんすい)」「立方体(りっぽうたい)」といった正確な数学用語を伝えましょう。【Step1】と同様、最初は「球・立方体・円柱」の3つを使い、徐々に増やしていきます。
三段階の名称法
- 【第一段階】名称の紹介(これは〜です)
- 【第二段階】認知の確認(〜はどれですか?)
- 【第三段階】名称の想起(これは何ですか?)
子どもが形を完全に覚える前に「第三段階」に進むと、答えられずに自信をなくしてしまいます。「第二段階」に時間をかけてクイズを楽しむようにしましょう!また、子どもの脳が整理しやすいように、新しく紹介する名称は「3つまで」に留めてくださいね。
「〜錐」と「〜柱」を区別するコツ
子どもにとって、形が似ている「三角錐」や「三角柱」などの見分けや、名称の使い分けは難しいポイントとなります。感覚と言葉をリンクさせることで区別しやすくなるため、教え方のコツを紹介します。
「錐」「柱」 教え方のコツ
- 「錐」は「手のひらの痛さ」を体感する
- 「錐」は、上が針のように尖っているのが特徴です。
- 触ったときの「痛い!」という体験で、「すい=てっぺんがチクっと尖っているもの」という記憶が残りやすくなります。
- 「柱」は「上に物が乗るかどうか」の実験で理解する
- 「柱」は上も下も同じ形で、平らな面が向かい合っているのが特徴です。
- 「〜錐」と「〜柱」を並べ、どちらが安定して物が置けるか実験をします。構造の違いから「ちゅう=物が置けるほう」と理解します。
- 名称は【底の形】➕【錐/柱】

Step.3(5〜6歳):発展活動
この時期は、頭の中で形をイメージする「抽象化」が育ちます。子どもが10種類の立体の形と名称を一致させられるようになったら、以下の5つの発展活動へ進んでみましょう。
①秘密袋のゲーム
アイマスクなどで目隠しをして視覚を遮断し、手のひらの「筋感覚」だけで形を識別するゲームです。
不透明な袋の中に幾何学立体を入れ、大人が「袋の中から『円錐』を探してね」とお題を出します。子どもは手探りだけで形を識別し、お題の立体を取り出します。この活動により、頭の中で立体のイメージを鮮明に描く「抽象化の能力」が躍進します。
この活動の更なる展開として、立体を2つずつ用意して「同じ感触の形」を探すペアリングゲームもできます。一つを「縮小サイズの立体」にするなど、活動の幅を広げていきましょう。
②投影板とのマッチング
立体の「底面の形(二次元)」と「立体(三次元)」を結びつける活動です。
⚪︎・△・◻︎が描かれたカード(投影板)を用意します。「この立体の底面(底)はどの形かな?」と問いかけ、マッチする立体の底をはめ合わせたり、横に並べたりします。立体が「何の形(平面)の組み合わせでできているか」に気づくことで、後の「展開図」の理解に繋がります。

③絵カードと実物のペアリング
幾何学立体の絵カードは、「立体(三次元)」から「平面(二次元)」の認識へと橋渡しをするための重要な発展教具です。絵カードと実物をペアリングすることで、頭の中でイメージする「抽象化」の能力を更に高めましょう。

絵カードは、写真を印刷したりイラストを描いたりして、簡単に手作りすることができます。
④環境認識
教具の世界から、現実の社会(環境)へと視野を広げる活動です。
幾何学立体を一つ選び、「同じ形のものを、部屋の中から探してみよう!」とゲームを開始します。子どもは、ボールや缶、ティッシュ箱などを家中から探し集めます。算数の概念が実生活と結びつき、身の回りの環境を数学的な視点で観察する目を養うことができます。

⑤分類ゲーム
立体の「動き」や「構造」の違いや特徴に注目し、共通点を見つける活動です。
「平らな面だけでできているグループ」「転がるグループ」など、10種類の立体を仕分けさせます。この活動により、形をただ覚えるのではなく、立体の持つ科学的・物理的な性質を論理的に分析する力が育ちます。
Step.4(5歳以降):算数教育への展開
小学校以降で習う算数の授業に直結する、具体的な3つの発展活動を紹介します。
①幾何学立体の基礎(立体の構成)
立体がどのような要素で成り立っているか、粘土とストローを使って実際に骨組み作りをします。
立方体を横に置き、頂点となる部分に「粘土の玉」、辺となる部分に「ストロー」を使い、同じ形を組み立てましょう。小学校2年生以降で習う「頂点」「辺」「面」の数や位置関係を、自分で作った構造として理解することができます。
家では、Amazonで購入した『ロンビー(Lon-Bi)』という知育玩具を使っています!

②展開図の理解
立体を平面に開く「展開図」を、感覚的に身につけましょう。
幾何学立体を紙に乗せ、鉛筆で底面の形をなぞります。次に立体を横に倒し、全ての面の形を連続してなぞっていきます。最後にハサミで切り抜き、もう一度立体に巻きつけて「展開図」が完成するか確認しましょう。
マグネットブロックを活用するのもおすすめです。展開図が複数あることにも気づけます。

③表面積の概念
高学年で習う「表面積」は、公式の暗記になりがちですが、教具を通じることで「その本質的な意味」を理解することができます。
前述した展開図を見て、「この立体の表面積は、1つの正方形の面積が6個あるということ」「三角柱の表面積は、三角形2枚と長方形3枚を足せば良い」ということに自ら気づかせます。
立体の面にシールを貼ると、同じ形が何枚あるか分かりやすくなります。
購入方法
モンテッソーリ教育の「幾何学立体」は、本格的な木製の教具から、リーズナブルな家庭用ミニサイズまで販売されています。
本格的な品質や大きさ(高さ約10cm)の教具は、MONTE Kids(モンテキッズ)などのモンテッソーリ教具の専門オンラインショップで購入できます。
Amazonや楽天市場などのネット通販では、3000〜6000円前後の価格で、「ミニサイズ(高さ約5〜6cm)」の木製セットが売られています。のちの発展活動で使う「投影板」が付随しているか、材質が「木製」であるかがチェックポイントです。
予算や寸法に合わせて、購入を検討してみてください。
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