モンテッソーリ教育では、言葉や数を学ぶ前に「感覚教育」をとても大切にしています。

色の違いに気づく。形や大きさを比べる。音の高低を聞き分ける。ざらざらやつるつるを感じる。

一見すると、勉強とは関係のない遊びのように見えるかもしれません。

しかし、マリア・モンテッソーリは、感覚を通して世界を知ることが知性の土台になると考えました。

なぜモンテッソーリ教育は感覚教育を重視するのでしょうか。

五感を通して世界と出会う感覚教育を表したイラスト

感覚教育って何?

感覚教育とは、五感を通して世界と出会うことです。

  • 見る
  • 聞く
  • 触る
  • 味わう
  • 香りを感じる

子どもは生まれてすぐから、さまざまな感覚を通して世界を吸収しています。

空の青さ。花の香り。水の冷たさ。鳥の声。

大人にとっては当たり前のことでも、子どもにとってはすべてが新しい発見です。

モンテッソーリ教育では、この「感じること」そのものを大切にしています。

では、人はどのようにして世界を理解していくのでしょうか。

人はどうやって世界を理解するの?

私たちは、「これは赤」「これは丸」「これは大きい」と、言葉を通して世界を学んできました。

絵本を読んだり、フラッシュカードを見たりしながら育った人も多いと思います。

もちろん、それが悪いわけではありません。

しかし、モンテッソーリ教育では少し順番が違います

まず見る。触る。持つ。比べる。違いに気づく。
そして、そのあとで言葉が意味を持つようになります。

例えば色板のおしごとでは、最初から「これは赤です」と教えることを目的にしているわけではありません。

色を見比べながら、「同じ色だ」「少し違う」という感覚を味わうことを大切にします。

その経験があるからこそ、「赤」という言葉がただの知識ではなく、意味のあるものになっていきます。

モンテッソーリ教育では、「具体から抽象へ」という考え方を大切にしています。

感覚があるから、言葉や概念が生まれる。そんな順番を大切にしているのです。

ピンクタワーや色板などの感覚教具で感覚を整理する様子

感覚教具は何のためにあるの?

こうした考え方は、感覚教具にも表れています。

  • 色板は色の違いを。
  • ピンクタワーは大きさを。
  • 茶色の階段は太さを。
  • 長さの棒は長さを。
  • 音感ベルは音の高低を。
  • 触覚板は手触りを。
  • 温覚板は温度の違いを。

それぞれの教具は、一つの感覚に集中できるよう工夫されています。

感覚教具の目的は、感覚を鋭くすることではありません。感覚を整理することです。

子どもは教具を通して、

「大きい」「小さい」「長い」「短い」「高い」「低い」といった違いを少しずつ整理しながら、世界を理解していきます。

感覚教具は、知識を教えるための道具ではなく、「世界を整理するための道具」なのです。

では、赤ちゃんへの語りかけや、絵本を読むことは矛盾するのでしょうか。

赤ちゃんへの語りかけと矛盾する?

赤ちゃんに、「赤いお花だね」「ふわふわだね」「冷たいね」と話しかけることは、とても大切です。

赤ちゃんは、大好きな人の声を聞きながら言葉を吸収していきます。

言葉をかけることと、感覚を大切にすることは対立するものではありません。

問題になるのは、言葉だけになってしまうことです。

「何色?」「何の形?」「何個?」と知識を教えることばかりに意識が向くと、子どもが感じている世界を置いていってしまうことがあります。

モンテッソーリ教育は、「言葉を教えない」のではなく、「感じることを忘れない」ことを大切にしているのです。

自然や芸術に感動する子どものイラスト

感覚教育は「賢い子」を育てるためのもの?

感覚教育というと、「知育」「能力を伸ばす」というイメージを持つ方もいるかもしれません。

しかし、モンテッソーリ教育が大切にしているのは、もっとシンプルなことです。

夕焼けを見て、「きれい」と思うこと。花の香りに気づくこと。絵の具が混ざる変化を楽しむこと。雨の音に耳を澄ますこと。

「面白い」「不思議」「きれい」そんな心が動く体験が、学びの始まりなのだと思います。

感覚教育は、賢い子を育てるためではなく、世界の美しさや面白さを味わうためのものなのかもしれません。

今からでも遅くない

私たちの多くは、言葉を通して学ぶことに慣れています。

絵本を読んだり、たくさん話しかけたりしながら子育てをしてきた方も多いと思います。

それは決して間違いではなく、今までのやり方を否定する必要はありません。

これからできることは、「何色?」と聞く前に、一緒に夕焼けを眺めること。

「ざらざらだね」と言う前に、一緒に触ってみること。

答えを教える前に、少しだけ感じる時間を味わうこと。

そんな小さな積み重ねで十分なのだと思います。

感覚から言葉や数、芸術へと学びが広がる様子を表したイラスト

まとめ

モンテッソーリ教育が感覚教育を重視するのは、感覚を鋭くするためでも、知識を増やすためでもありません。

子どもはまず感じます。

そして、感じたことを整理しながら、少しずつ世界を理解していきます。

モンテッソーリ教育は、「言葉か感覚か」という二択を求めているわけではありません。

言葉の前にある「感じること」を忘れないこと。

それが、感覚教育を大切にする理由なのかもしれません。

子どもの「きれい」「面白い」「なんだろう?」

そんな小さな感動を、これからも一緒に味わっていきたいですね。

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📖『モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方』
モンテッソーリ教育を初めて学ぶ人にも読みやすい一冊。「感覚教育」や「具体から抽象へ」という考え方もわかりやすく紹介されていて、おうちモンテッソーリを始めたい方にもおすすめです。難しい理論よりも、子どもの発達に寄り添った実践が多く、親としての関わり方を見直すきっかけになります。


📖『子どもの発見』
モンテッソーリ教育の原点ともいえる一冊。感覚教育についても詳しく書かれており、「子どもは感覚を通して世界を理解する」という考え方の背景がよくわかります。決して読みやすい本ではありませんが、感覚教育の本質を知りたい人には一度読んでほしい名著です。


📖『幼児の秘密』
「なぜ子どもは繰り返すの?」「なぜ感覚教育が大切なの?」そんな疑問に答えてくれる本。教具の使い方よりも、子どもの内面や発達へのまなざしを学ぶことができます。

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