モンテッソーリ教育は、「自由な教育」と紹介されることがあります。

その言葉を聞いて、

  • 「何でも好きにさせる教育なの?」
  • 「叱ってはいけないの?」
  • 「ルールはないの?」

と思ったことはありませんか。

実は、それはモンテッソーリ教育の大きな誤解です。

STEPシリーズではこれまで、

  • 子どもには自ら育とうとする力(自己教育力)があること
  • 環境から多くのことを吸収すること
  • 敏感期には必要な力を夢中で身につけようとすること
  • 「自分でやりたい」という主体性が育つこと
  • 子どもを観察し、環境を整えること

についてお伝えしてきました。

そして、それらすべてを支えている考え方があります。

それが「自由(Liberty)」です。

今回は、マリア・モンテッソーリ自身の言葉も交えながら、モンテッソーリ教育が大切にした「自由」と「規律」の本当の意味について考えてみたいと思います。

関連記事🌱
🔗 STEP1|モンテッソーリ教育とは?
🔗 STEP5|モンテッソーリ教育の自立と主体性とは?

モンテッソーリ教育がいう「自由」とは?

「自由」と聞くと、

  • 好きなことをする自由。
  • 好きなものを選ぶ自由。
  • 好きな時間に過ごす自由。

そんなイメージを持つ方も多いかもしれません。

もちろん、それも自由の一つです。

しかし、モンテッソーリ教育で大切にされている自由は、もう少し深い意味を持っています。

英語では「自由」を Freedom と表現することもありますが、英訳されたモンテッソーリの著書では、「自由」を表す言葉として Liberty が使われています。

(モンテッソーリの原著はイタリア語で書かれており、原文では「自由」を意味する libertà という言葉が使われています。)

この記事では、英訳に使われた Liberty という言葉にも触れながら、モンテッソーリ教育が大切にした自由の意味を考えていきます。

FreedomLibertyも、どちらも日本語では「自由」と訳されますが、

Liberty には、

「子どもが本来持っている成長する力を発揮できるよう、不要な妨げから解放する」

という意味合いがあります。

そして、マリア・モンテッソーリは、この自由について次のように述べています。

Liberty is activity.
(自由とは、活動することです。)
― Maria Montessori, The Montessori Method, Chapter V ※筆者訳


モンテッソーリ教育でいう自由とは、「何でも好きにしていいこと」ではありません。

子どもが自ら活動し、試し、繰り返し、経験しながら、自分自身を育てていくこと。

その活動そのものが「自由」なのです。

自由とは活動すること

ここまでSTEPシリーズを読んでくださった方は、もうお気づきかもしれません。

これまでお伝えしてきたことは、すべて「活動」へとつながっています。

子どもには、生まれながらに自ら育とうとする自己教育力があります。

環境から多くを吸収する吸収する精神があります。

今必要なことを夢中になって身につけようとする敏感期があります。

「自分でやってみたい」という主体性があります。

だからこそ、大人は子どもを観察し、その子に合った環境を整えます。

そして、その「環境」とは、以前STEP8でお伝えしたように、

「挑戦できる余白」でした。

それは言い換えれば、

「活動できる余白」でもあります。

子どもが自分で活動し、自分自身を育てていく。

そのために環境を整えること。

それが、おうちモンテッソーリの本当の意味なのだと思います。

関連記事🌱
🔗 STEP2| 自己教育力とは
🔗 STEP3| 吸収する精神とは
🔗 STEP4| 敏感期とは
🔗 STEP5| 自立と主体性とは
🔗 STEP6| おうちモンテッソーリとは
🔗 STEP7| 観察とは
🔗 STEP8| 環境とは

子どもを自由にするとは?

子どもは、大人のことが大好きです。

だから、

  • 「褒められたい。」
  • 「怒られたくない。」
  • 「喜んでほしい。」

そんな気持ちを自然に持っています。

そして、大人が言葉にしなくても、表情や声のトーン、ため息、少し残念そうな顔、そんな小さな変化まで敏感に感じ取っています。

そのため、「私はどうしたい?」よりも、

「どうしたら褒められるかな。」

「どうしたら怒られないかな。」

を基準に行動してしまうことがあります。

もちろん、それは悪いことではありません。

親子の信頼関係の中では、とても自然な姿です。

でも、もし大人の評価だけが行動の基準になってしまうと、

子ども自身が、「私はどうしたいのだろう。」と考える機会は少なくなってしまいます。

モンテッソーリ教育が大切にした自由とは、子どもを好き勝手にさせることではありません。

大人の思い通りに動かすことでもありません。

子どもが、

自分で活動し、自分で経験し、自分で考え、自分自身をつくっていけるようにすること。

そのための自由なのです。

規律とは「内側から育つ力」

ここで、「規律」という言葉についても考えてみましょう。

「規律」という言葉からは、厳しいルールやしつけを思い浮かべる方も多いかもしれません。

でも、マリア・モンテッソーリが伝えたかった Discipline(規律) は、それだけではありません。

それは、自分で考え、自分をコントロールし、自分の意思で行動できる力です。

日本語では「内なる規律」「自己規律」「自律」などと訳されることもあります。

また、マリア・モンテッソーリは、規律ある人についても、次のように述べています。

We call an individual disciplined when he is master of himself…
(私たちが規律ある人と呼ぶのは、自分自身をコントロールできる人です。)
― Maria Montessori, The Discovery of the Child, p.51 ※筆者訳

ここでいう master of himself は、「自分自身の主人」という直訳よりも、「自分の感情や行動を自分でコントロールできる状態」と考えると分かりやすいでしょう。

つまり、モンテッソーリ教育が目指した規律とは、大人に従うことではなく、自分で考え、自分で行動を選べることなのです。

規律は自由を通して育つ

「自由(Liberty)」「Discipline(規律)」の関係について、マリア・モンテッソーリは、

Discipline must come through liberty.
(規律は、自由を通して育つ。)
― Maria Montessori, The Montessori Method, Chapter V ※筆者訳

と述べています。

この言葉は、一見すると矛盾しているように感じるかもしれません。

自由にしたら、好き勝手になってしまうのでは?

そう思う方も多いでしょう。

でも、モンテッソーリ教育では逆に考えます。

子どもは自由に活動し、経験し、教師や周りの子どもとの関わりの中で気づき、

理解を深め、少しずつ自分から行動できるようになります。

つまり、

「活動」→「経験」→「気づき」→「理解」→「規律」

という流れです。

自由を通して規律が育つことを表したイラスト

大人は「気づきを支える人」

では、その活動を支える大人の役割とは何でしょうか。

私は、モンテッソーリ教育の先生方を見ていて、一つ強く感じることがあります。

それは、大人が答えを一方的に教え込まないということです。

もちろん、放っておくわけでもありません。

困っている子どもがいたら、そっと近づきます。

でも、「こうしなさい」と答えを与えるのではなく、

子ども自身が気づけるような関わりをされています。

子どもが活動し、経験し、理解できるように、そっと背中を押す。

だから大人は、答えを与えるだけの人ではなく、

子どもを観察し、自分で気づけるよう環境や関わり方を整える存在なのです。

幼稚園で感じた規律

娘が通うモンテッソーリ幼稚園で、何度見ても感動する場面があります。

お仕事の時間が終わると、年中さんの係の子がベルを鳴らします。

「チリン、チリン。」

その音が聞こえると、先生が「片付けましょう。」と言わなくても、

子どもたちは自然と教具を元の場所へ戻し始めます。

もちろん、最初からできたわけではありません。

年上の子どもの姿に憧れ、先生の関わりを見て、毎日活動を繰り返す中で、

「今は片付ける時間なんだ」「使ったものは元の場所へ戻すんだ」

ということを、周りの姿や毎日の経験から少しずつ理解しているように見えます。

その積み重ねの先には、「次に使う人も気持ちよく使えるように」という周りへの配慮も育っていくのかもしれません。

そこには、命令も、ご褒美も、ありません。

活動し、経験し、周りの人との関わりの中で理解し、自分から動けるようになる。

私はその姿に、「規律は自由を通して育つ」という言葉そのものを見たような気がしました。

自由な活動の中で規律が育つことを表したイラスト

自由には境界がある

だからといって、自由とは何をしてもいいという意味ではありません。

マリア・モンテッソーリは、子どもの自由について次のようにも述べています。

A child’s liberty should have as its limit the collective interest.
(子どもの自由は、共同体全体への配慮をその限界とします。)
― Maria Montessori, The Discovery of the Child, p.86 ※筆者訳

「共同体全体への配慮」というと少し難しく感じますが、家庭や園で言い換えれば、「自分だけでなく、みんなが安心して活動できること」です。

  • 人を傷つけること。
  • 活動を壊してしまうこと。
  • 危険なこと。

そうした行動は、大人が止める必要があります。

でも、それ以外の活動は、できる限り保障されるべきだと考えました。

だから大人は、子どもをコントロールする人ではありません。

子どもが活動する姿をよく観察し、必要な時だけ気づきを与え、子ども自身が理解できるよう支える存在なのです。

感情は自由。伝え方は育てていく

ある幼稚園の行事の日、娘がお友達とのやり取りがきっかけで大泣きしてしまったことがありました。

私もどう声を掛けたらいいか分からず困っていると、先生が静かに近づき、こう話してくださいました。

「大人はね、子どもが泣いていると心配するの。けがをしたのかな。怖いことがあったのかな。と心配になるのよ。だから、何があったのか、言葉で教えてくれる?」

先生は、「泣いてはいけません」とは言いませんでした。

先生はまず、娘にけががないことや、何があったのかを確かめました。

その上で、「言葉で伝える」という新しい方法に気づかせてくださったのです。

私は、この関わりがとても印象に残っています。

悲しい。悔しい。腹が立つ。

そう感じることは自由です。

でも、その気持ちをどう表現すれば、自分も周りの人も大切にできるのか。

そのことを、子どもは少しずつ活動や経験の中で学んでいきます。

これもまた、「自由を通して育つ規律」なのだと思います。

おうちでできること

家庭でも、特別なことをする必要はありません。

大切なのは、子どもが活動できる時間を残すことです。

例えば、

  • 自分で選べる場面をつくる。
  • 少し待ってみる。
  • 失敗を急いで止めない。
  • 「どうしたらいいと思う?」と問いかける。
  • 必要な約束だけを、穏やかに伝える。

そして、答えを急いで教えるのではなく、

子ども自身が気づける余白を残してあげること。

その小さな積み重ねが、

「自分で考える力」

「自分を信じる力」

「自分を律する力」

へとつながっていくのだと思います。

まとめ

STEPシリーズでは、

自己教育力、吸収する精神、敏感期、主体性、観察、環境についてお伝えしてきました。

それらすべてが目指しているのは、

子どもが

自分で活動し、自分で経験し、自分で考え、自分自身をつくっていくこと。

そのために必要なのが、

モンテッソーリ教育がいう「自由(Liberty)」です。

そして、その自由の中で、

少しずつ理解を深め、自分から行動できるようになっていく。

それが「規律(Discipline)」なのです。

だから私は、

自由と規律は反対のものではなく、

自由があるからこそ、本当の規律は育つ。

それが、モンテッソーリ教育が100年以上大切に伝え続けてきた考え方なのだと思っています。

🌱この記事でお伝えしたいこと

モンテッソーリ教育が大切にする自由とは、「何でも好きにしていい自由」ではありません。

子どもが活動し、経験し、自分で考え、自分自身をつくっていくための自由です。

そして、その自由の中でこそ、本当の意味での規律(Discipline)が育っていきます。

🏡我が家では…

娘が通うモンテッソーリ幼稚園で先生方の関わりを見るたびに、「教える」のではなく「気づきを与える」という姿勢に、いつも学ばせてもらっています。

私自身も、つい答えを教えたり、先回りしたりしてしまう毎日です。

だからこそ、「この子が自分で気づける余白は残せているかな?」と、自分に問いかけながら子どもと向き合っていきたいと思っています。

📚参考文献・参考資料

  • マリア・モンテッソーリ『子どもの発見』
  • マリア・モンテッソーリ『吸収する精神』
  • The Discovery of the Child(Maria Montessori)
  • The Montessori Method(Maria Montessori)
  • Association Montessori Internationale(AMI)

※本文中の英語原文は、英訳版『The Montessori Method』『The Discovery of the Child』を参考に引用しています。日本語訳は、文脈と読みやすさを考慮した筆者訳です。

🌸もっと深く学びたい方へ(おすすめの本)
この記事は、私自身がモンテッソーリ教育で育った経験と、現在娘とおうちモンテッソーリを実践する中で感じたことに加え、モンテッソーリ教育の考え方や書籍を参考に執筆しています。
さらに理解を深めたい方には、次の書籍もおすすめです。

📖 『子どもの発見』(マリア・モンテッソーリ)
→「自由」「規律」「教師の役割」について、マリア・モンテッソーリ自身の言葉で学べる代表作です。STEPシリーズを読んでくださった方に、ぜひ一度手に取っていただきたい一冊です。

たぬさん

🍀 子どもは、答えを教えられて育つのではなく、自分で気づきながら育っていきます。

だからこそ、大人にできることは、答えを急いで伝えることではなく、子どもが気づける時間と環境を残してあげることなのかもしれません😊

🌱次におすすめの記事
STEPシリーズを最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました
このSTEPシリーズでモンテッソーリ教育の基本を知った後は、毎日の暮らしの中で実践できる記事もおすすめです。
🔗 おうちモンテッソーリ|日常生活のおしごと一覧
🔗 モンテッソーリ教具って本当に必要?
🔗 子どもの自律とは?自分をコントロールする力の育ち方

ABOUT ME
たぬさん
モンテッソーリ教育経験者の子育て中ママが、おうちでできるモンテッソーリ教育について配信しています! ◾️精神科看護師 ◾️アメブロ ◾️育児本100冊以上購読