育児本紹介

子どもをきちんと愛せているのか?そんな不安を抱えるあなたへ|【エーリッヒ・フロム『愛するということ』からの学び】

「私は、子どもをきちんと愛せているだろうか?」

たぬさん
たぬさん

親になってから、ふとした時に思い浮かぶ疑問です。

子どもを産めば自然と母性が芽生え、母がくれたように私にも“無償の愛”が湧いてくるものだと固く信じていました。

しかし、実際はどうでしょうか?

親になっても尚、『愛すること』より『愛されること』を渇望しているような、そんな幼稚な感情が心の奥底に潜んでいる気がしてならないのです。

今回は、『愛する』ということに試行錯誤をする中で出会い、感銘を受けた本を紹介します。

それがこちら↓

『エーリッヒ・フロム』の【愛するということ】です。

子どもやパートナーを愛せているのか、そんな不安を抱える方に是非読んでいただきたいと思います。

本の要約

精神分析学者の『エーリッヒ・フロム』が、「愛とは感情ではなく、技術として学ぶものだ」という主張に基づいて、“愛するとはどうゆうことか”説明している本です。

難易度が高く読み応えのある本ですが、「これさえ読めば理解できること」を6点にまとめたので解説していきます。

【愛するということ】

  1. 愛とは、技術である
  2. 愛とは、与えることで生まれる
  3. 愛するとは、相手を深く知り、相手の全てを尊重することである
  4. 愛するためには、自立していなければならない
  5. 現代の資本主義社会では、本当の愛を育むことは難しい
  6. 愛するためには『〇〇力』を育み、自己中心を克服しよう

①愛とは、技術である

たいていの人は愛の問題を、愛するという問題、つまり愛する能力の問題としてではなく、愛されるという問題として捉えている。つまり、人びとにとって重要なのは、どうすれば愛されるか、どうすれば愛される人間になれるか、ということだ。

愛するということ(P.11)

愛される人間になることばかり考えて、愛されたいと思える相手を求め続け、愛は持続するものだと疑わない。(・・・私のことでしょうか?)と思い当たる節ばかりです。

孤独を克服したいと“愛すること”を渇望しているにも関わらず、愛することは簡単であると思い込んでいる人は大勢います。人を愛するためには、音楽や絵画の技術を学ぶときと同様に、『愛する技術』を学ばなければならないのです。

②愛とは、与えることで生まれる

愛は能動的な活動であり、受動的な感情ではない。そのなかに「落ちる」ものではなく、「みずから踏みこむ」ものである。愛の能動的な性格を、わかりやすい言い方で表現すれば、愛は何よりも与えることであり、もらうことではない、と言うことができよう。

愛するということ(P.41)

愛は、待っているだけでは手に入りません。愛とは、自分から与えることで生まれます。

『与える』とは、何かを諦めて犠牲にすることではなく、見返りを求めることでもありません。『与える』とは、自分の喜び、興味、理解、知識など、自分にある全てを相手に惜しみなく与えることであり、つまりは自分の命を与えることなのです。

『愛する(与える)』ためには、人格が成熟している必要があります。

愛するためには、人格が生産的な段階に達していなければならない。この段階に達した人は、依存心、ナルシシズム的な全能感、他人を利用しようとか、なんでも貯めこもうという欲求をすでに克服し、自分のなかにある人間的な力を信じ、目標達成のために自分の力に頼ろうという勇気を獲得している。これらの性質が欠けていると、自分を与えるのが怖く、したがって愛する勇気もない。

愛するということ(P.46)

③愛するとは、相手を深く知り、相手の全てを尊重することである

愛するための要素として、フロムは「配慮」「責任」「尊重」「知」の4つを挙げています。一言でまとめると、「相手を知り、相手の望んでいることに気づき、相手のありのままを受け入れること」が、『愛する』という行動になります。

4つの要素は互いに影響し合っていますが、すべては「」から始まり、特にカギとなるのが「尊重」だと個人的に思っています。

相手を「知る」とは、相手に抱いている幻想や期待を修正し、マイナスな面も含めて相手の現実的な姿を見なければいけません。愛する人が何に腹を立て、何を幸せに感じるのか、相手の内面まで深く「知る」ことではじめて、相手の“ありのまま”を受け入れることができます。

④愛するためには、自立していなければならない

また、フロムは「尊重」について、以下のように語っています。

誰かを愛するとき、私はその人と一体感を味わうが、あくまでありのままのその人と一体化するのであって、その人を、私の自由になるようなものにするわけではない。いうまでもなく、自分が自立していなければ、人を尊重することはできない。

(中略)自由であってはじめて人を尊重できる。

愛するということ(P.50)

「支配したり利用したりせずに自分の足で歩くことで、誰かを尊重できる」という指摘には、啓発を受けました。

子育て中は、一人で抱えずに誰かに頼ることが大切です。しかし私の場合は、夫や実母に助けてもらうのは“当たり前”と感謝を忘れ、いつからか依存へと変わっていました。“自分の楽”のために“相手の自由”を奪い、『与える(=愛する)』こととはかけ離れていたと思います。

相手を尊重して『愛する』ためには、他人を利用するという欲求を克服して自立していなければならないのです。

⑤現代の資本主義社会では、本当の愛を育むことは難しい

損得勘定になりやすい現代の資本主義社会では、「本当の愛を育むことは難しい」そうです。(ええ?)と拍子抜けしますが、納得できる指摘でもあります。

私の母は、専業主婦で4人の子どもを育てました。母はとても愛情深く、子どもながらに“子ども優先”の生活をしていると感じていました。その愛情に数えきれないほど救われてきた一方で、そんな母と比べると(私は娘を愛することができているのだろうか?)と不安に襲われる時があります。

女性の6〜8割が専業主婦だった当時と比べ、生き方の選択肢が広がっている現代では、自分の人生と子どもを天秤にかける場面が増えていると感じます。世間は“両立”と言いますが、実際はどちらかの犠牲が必要だったり、どちらも中途半端になり罪悪感を抱くことも多いです。少子化の進む現代において、自分以外を優先しきれず『愛する(与える)』余裕が少ないのは、事実かもしれません。

⑥愛するためには『〇〇力』を育み、自己中心を克服しよう

ここまでまとめると、愛するためには、与えることを躊躇わず、相手の全てを尊重するために自立している必要があります。その障害となるのは、いずれも「自己中心」です。自己中心とは、過度な自己愛を指します。

フロムは、「他人を愛するためには、まず自分を愛すること」と述べています。一見すると矛盾しているように感じますが、『自分を愛する』とは過度な自己愛を克服して、健全な自己愛を育てることなのです。

そのために必要となるのが、「客観力」です。自己中心は、自分の考えがすべて正しいと信じ、自分に都合の良い解釈で物事を捉えます。「客観力」を育てることで、事実に基づき公平に物事を判断することができるようになるのです。

『客観力』について、フロムは以下のように説明しています。

客観的に考える能力、それが理性である。理性の基盤となる感情面の姿勢が謙虚さである。子どものときに抱いていた全知全能への夢から覚め、謙虚さを身につけたときにはじめて、自分の理性を働かせることができ、客観的にものを見ることができるようになる。

愛するということ(P.179)

自分を客観的に見ることで、“母親”や“愛”という理想像を追うのではなく、自分ができる『愛する』行動を取れるようになります。また、客観視することで自己愛と他者愛のバランスを正し、他者に与える余裕も生まれるのです。

『客観力』については、“メタ認知”という言葉でこちらのブログでも説明していますので、併せて参考にしてみてください。

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まとめ

『エーリッヒ・フロム』の【愛するということ】について、6点にまとめて解説しました。

  1. 愛とは、技術である
  2. 愛とは、与えることで生まれる
  3. 愛するとは、相手を深く知り、相手の全てを尊重することである
  4. 愛するためには、自立していなければならない
  5. 現代の資本主義社会では、本当の愛を育むことは難しい
  6. 愛するためには『〇〇力』を育み、自己中心を克服しよう

「愛するためには愛する技術を学ばなければならない。愛することは決して易しいことではない」というフロムの言葉には、多くの気づきと安心感がありました。出産をすれば子どもを“自然と愛せる”と思っていましたが、努力をして習得する必要があったのですね。

子どもの言動にイラッとする時もあるかもしれません。感情的になって叱る時もありますよね。一方で、美味しいご飯を一緒に食べたり、温かいお風呂や布団を用意したり、「大好きだよ」と伝えたり、頭を撫でたり抱きしめたり・・・これらすべてが『愛する』行動の一つであることを忘れないでください。

多くの学びが得られる『エーリッヒ・フロム』の【愛するということ】、おすすめですので是非ご一読ください。

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モンテッソーリ教育出身の子育て中ママが、おうちでできるモンテッソーリ教育について配信しています! ◾️精神科看護師 ◾️アメブロ ◾️育児本100冊以上購読